雄山東陵



雄山東陵最後の3ピークが立ちはだかる(2009年8月26日)

所在地富山県立山町
黒部平 アプローチ立山黒部アルペンルート
登山口標高1828m
標   高3003m
標高差実累計950m 
沿面距離片道2.8Km
登山日2009年8月26日
天 候
同行者単独
コースタイム 黒部平(3時間50分)最終ピーク<休憩15分>(2時間40分)黒部平
合計6時間30分<休憩15分含む>



あと3ピークで雄山南陵との合流点だったが...撤退を決定 左の軌跡は雄山南陵のもの
 
 雄山南陵から見た東陵。ワクワクする未知のルートだ。何処から取り付くか?大観峰駅からロープウエイの点検道を降るのは体力的に楽だが美しくない。
 黒部平までロープウエイで降って東陵の末端から取り付くのが正しいルートだと決定。


ロープウエイからのぞむ雄山東陵と後立山連峰
 
 雄山東陵は南陵より距離もあり、標高差もある。前回(雄山南陵)より速く家を出て7時のケーブルに乗る。(実はそれでも遅かった)
 バス、トロリーバス、ロープウエイを乗り継いで標高1828mの黒部平に降り立つ。


9時10分黒部平の点検道入口から入る
 

点検道からのぞむ雄山東陵と大汝、富士の折立
 
 ここからロープウエイの点検道(残念だが一般の人は入れない)に入る。点検道は途中から尾根を外れて大観峰駅に向かうので藪こぎが必至だ。
 覚悟はしていたが藪が濃い。視界は2mで足下も見えない灌木と竹藪の藪こぎとなる。


東陵から望むロープウエイ大観峰駅
 

東陵からのぞむ黒部湖と遊覧船ガルベ
 
 徐々に斜度がきつくなって腕力(岩場のために残しておきたい)の世界へと変わっていく。
 1m登って2m滑り落ち、灌木に足を取られて横倒しになり、なんだかんだで藪を抜けるのに2時間を要した。稼いだ標高差は、多分、400mぐらいだろう。


点検道から東陵の藪漕ぎに入る
 

視界2mで足下も見えない藪漕ぎが続く
 

ロープウエイ大観峰駅
 

果てしなく続く藪
 

ようやく草付き地帯にたどり着く
 
 11時30分、ようやく藪がうすくなる。草付きと岩の稜線歩きに変わるが藪がなくなったわけではなく時々出てくる。もう、うんざりだ。
 いくつかの小ピークを越えていく。


岩と草付きと藪のミックスが続く
 

慎重にコースを読みながら行く
 
 稜線歩きに出てくるこんな風景も、踏み跡もなく誰もいないところで見ると新鮮だ。岩を直登するか、草付きを巻くか、直感を織り交ぜながら慎重にコースを選ぶ。


左奥が最後のピーク 手前のギザギザのピークで進退の判断に悩む
右奥の尖っているのが雄山で右端が大汝山

 草付きに出て、水を飲もうとしたのだがリュックのサイドポケットに入れたペットボトルを落としてしまっていた。多分、落としたのは藪こぎで暴れていたときだろう。
 持ち込んだ水はその500mlだけ。今朝、6時前に飲んだコーヒー以外水分は取っていない。口の中がネバネバのネバーランドになっている。
 ベニバナイチゴやクロマメノキの実で気休めの水分補給。


このあたりでは登頂成功を確信していたのだが
 

右奥は頂上へ続く雄山南陵
 

両方がきれ落ちた岩稜を行きギザギザのピークへ
 
 所々で見かけた白と黒の電線は大観峰駅建設時代の通信線?トンネルが完成していない時代なので、雄山からこの東陵の上を通して通信していたのだと思われる。
 後日、会社のOBに確かめてみるとその通りだった。


稜線に残されていた電線は?
 

熊の糞
 
 ギザギザのピークを越えたところで雄山南陵と合流している最後のピークをあらためて眺める。
 最初のピークも急だが何とか登れそうだ。最後のピークが不明。その2つのピークの間にもうひとつのピークがある。(登る途中で見えていた)
 時間は13時を廻っている。最後のピークへは1時間近くかかりそうだ。そこで行き詰まったら14時。戻っている時間はない。最悪、暗くなってしまう。
 黒部平まで戻ってしまえば会社の施設だからビバークになるほど酷くはないが、家に帰れないし、仕事には遅刻する。


雄山東陵最後の3ピーク(2ピーク目は陰で見えない)と雄山南陵 右奥は雄山
手前のピークは登れそうだが最後のピークが不明 間のブラインドピークも不安

 戻るにも問題がある。持ち込んだザイルは10mの補助ザイル1本とスリングが数本だけ。暗くなったら視界の効かない藪こぎを正しく降れるかも分からない。
 多分、最後のピークも乗り越えられると思うが10〜20%の不確かさがある。水がないこと。単独であること。悩むこと15分、撤退を決めた。


望遠で引っ張った雄山と雄山神社社務所
 
 あの藪こぎを降るのかと思うとうんざりだった。視界の効かない急な藪こぎを降るのは難しい。
 どちらが正しい方向か分からなくなる。時々見える山並みなんかあてにならない。何度も軌道修正しながら藪をこいだ。


時間制限と単独であることから撤退を決定
 

誰がつけたのか唯一残っていた赤符
 
 15時15分、点検道にもどる。両腕(半袖だった)両スネ(パンツをはいていても)は傷だらけ。
 ここからは大観峰駅の方が近いがなんとなく潔くない。出発した黒部平に向かった。
 15時40分、黒部平に到着。なりふり構わず、まずは水分補給。アサヒスーパードライが美味しかった。
 よほど、みすぼらしかったのか、黒部平駅の前田さんがペットボトルを1本恵んでくれた。ありがとう。


3時40分黒部平に戻る
 

帰りのバス車中から剱を撮る
 
 リベンジを誓いたいが、あの藪こぎを思うとうんざりする。単独では不安もある。それに9月に入ると立山駅の始発ケーブルは遅くなり、室堂の終バスは早くなる。
 今年はもう日帰りは無理だ。藪こぎが好きな仲間も何人かいる。来年、誘ってみよう。


鍬崎山と弥陀ヶ原高原(バス車中より)
 
 帰ってから地図を眺める。大観峰駅の屋上から直登して雄山東陵に出た方がコースとしてはスッキリしているようだ。
 許されればの話だが多分無理。なまじ大観峰駅が会社の施設というのがネックだ。こっそりやるしかない。